再びお便りさせていただきますことをお許し下さい。
令和2年春より、世界中が100年に一度の未曽有の
コロナウイルス感染で、当たり前だった日常が
一瞬にして奪われました。
令和3年、この秋にはワクチンを接種された方々も
増え、急激な感染拡大も落ちつき、ほんの少しでは
ありますが、今までの日常が取り戻され
はじめました。
しかし、実際は予断を許さない日々でもあります。
第6波が訪れ、再び皆さまに制限強化をお願い
しなければならない状況も十分に考えられます。
そんな時に備え、2つの「こころのポケット」を
ご用意くだされば幸いと思いペンを執りました。
この2年間余りの制限の中で、産科の現場で働く
私たちが素直に感じ、気づいた大切なポケット
だと思っているからです。
一つ目は…
この令和2年、3年に赤ちゃんがママのお腹に
“いのちを宿された”意味を感じるポケットです。
ママとお腹の赤ちゃんは、ご家族さまとマタニティ
ライフを楽しく過ごすことも叶わず、ただひたすら
コロナウイルスに感染しないよう、そして無事
赤ちゃんを出産したいとの祈りと緊張感の続く
日々を送られました。
この約2年近くのコロナ災害は歴史的な出来事と
して必ず教科書に記載されると思います。
コロナ禍でお生まれになった赤ちゃんがご成長され
教科書でその内容を目にされた時が訪れましたら
“あなたはこの時期に私のお腹にやってきて
くれたんだよ。ママもパパ、家族もとても大変な
毎日だったけど、あなたはすくすくお腹で大きく
なってくれたの。大変な時をみんなで一緒に
乗り越えたんだよ。ほんとにありがとうね”と、
是非お話してあげてください。
そして、大きくなられたお子さまと、互いを
褒め合っこしていただけたらと。
それが一つ目のポケットです。
ご妊娠、ご出産、産後のご苦労を、大きくなられた
お子さまにお伝えし、振り返られることで毎日
続く子育ても少しは楽(らく)に感じたり、
これからやってくる思春期、青年期での
ダイナミックな親子の関りの時期にも大きな
礎(いしずえ)、糧(かて)になると信じています。
(まだかなり先のことではありますが、
風化させることなく是非大切な親子の
交流に繋げて下さい。)
もう一つのポケットは…
アイ・レディスはこの2年間の中で3回、ご家族の
立ち会い、ご面会を全て中止とさせて
いただきました。
母子の安全を第一に考えることは365日24時間
どんな状況下でも当然のことです。
この31年間、ご出産は自然の恩恵に感謝
しながら、でも一瞬にして脅威が降りかかる
“営み”であることも私たちは常に心して
従事してまいりました。
医療の無力さをつきつけられたこともありました。
至らぬ事も多々ありました。
この2年間のコロナ禍では私たちもそんな気持ちの
毎日で揺れ動いていたのも事実です。
しかし、そんな疲弊した私たちの気持ちを前向きに
してくださったのも、ママと赤ちゃん、ご家族さま
からの教えだったのです。
それが二つ目のポケットです。
大切な大切な人に直接逢えない悲しい気持ち、
辛い気持ち、切ない気持ちを我慢し、耐えられた
時間は決して無駄ではないと気づかされました。
耐えた時間がより一層互いを必死に想い、
愛情が益々募り、「こころの密の種(たね)」が
ママ、赤ちゃん、ご家族さまのこころの間に
植えられたのではないでしょうか。
そしてその種は時と共に芽ばえ、やがて将来、パパ、
ママが近くにいらっしゃらなくても、ご家族さまを
お心に留め、ご家族さまを信頼し、自分を愛し、
自信を持って一歩一歩大地を踏みしめ、
自立していくお子さまに成長されていかれると。
勿論、一生に一度か二度といわれているママの
ご出産に立ち会えなかったカップルのお辛さは
察するに余りあるものです。
でも人には、ままならない状況を実りある体験に
変えていく「力」=「レジリエンス」がある
ことを私たちはこの2年間のご家族さまの
出会いから学ばせていただきました。
「レジリエンス」とは困難に遭遇した時、
人はそれを乗り越え、立ち直る『回復』
『弾力性=柔軟性』を意味します。
目の前にいらっしゃるママと赤ちゃん、
ご家族さまが、制限強化の中、おしみなく
慈しみ溢れる交わりをされているシーンや
メッセージの中に「これがご家族さまの
レジリエンス‼」といっぱい感じさせて
いただきました。
そして今回のパンデミックから強いられた
ご苦労やお辛かった日々は、ご家族さまの
レジリエンスをムクムク培ってくれたと
思っています。
「我慢するこころ」「耐え抜くこころ」
「そばにいなくてもご家族を感じ、
勇気と希望に繋がるこころ」
そんな実りある豊かな種(たね)を二つ目の
ポケットにそっと入れていただけたら幸いです。
今回も長いお便りとなってしまいました。
ご家族さまの深い結びつきの種はやがて実り、必ずや
お子さまの世代へと受け継がれていくでしょう。
脈脈と…
そして、尊い実をいっぱいつけた木は、100年に
一度のたくましい大樹(たいじゅ)となって、
パパ、ママ、ご家族さま、ご成長されたお子さま、
そしてコロナ禍で生まれてくださった全ての
「いのち」を見守り続けてくれると信じて、
ペンを置きます。
最後までお読みくださりありがとうございました。
このお便りを書いた10月1日、お生まれになった
3人の可愛い赤ちゃんのお顔を思いながら…
3人の赤ちゃんのママさまが、インタビューに
答えて下さいました。
*歩大(あゆと)くんのママさま*
♦ご出産時のエピソード♦
自宅で破水した為、10月1日0時過ぎに入院に
なりました。
緊急事態宣言解除後で奇跡的に立ち会いも可能に
なり、立ち会いはないと思っていたパパは
うろたえたそう。
弱音ばかりの私に助産師さん看護師さんの
声かけに何度も助けられました。
痛みで余裕のない私の腰を、一所懸命さすって
くれたパパ。
無事赤ちゃんを一緒に迎えることができて
本当によかったです。
♦お子さまへの想い♦
やっと会えたね!本当に本当に嬉しいよ。
パパとママのところにきてくれてありがとう♡
一歩のあゆみは大きいです。
そんな一歩を大切にできるよう、あゆとにとって
素晴らしい人生でありますように。
強く優しく元気にのびのび育ってね!
*Mちゃんママさま*
♦ご出産時のエピソード♦
予定帝王切開だったので、予定日が2週間早まるので
不安はありましたが、無事に元気な産声をあげて
泣いてくれたので安心しました。
私がきんちょうしていたのを、スタッフのみなさんが
ついていたおかげでリラックスでき、乗り越える
ことができました。
ありがとうございました!
♦お子さまへの想い♦
ママから…元気に産まれてきてくれてありがとう。
お兄ちゃんと仲良くしていって
ほしいです!
これからもすくすく元気に
育っていってね!
パパから…健康に産まれて良かったです。
名前の通り、強い人間になってください。
*Rくんママさま*
♦ご出産時のエピソード♦
コロナ禍の出産で、立ち会いも中止で、不安も
あったけど、タイミング良く、出産日から
立ち会いが再開!
旦那さんも仕事が運よくお休み!
ただ、上の子が居るので家族に預けに行ったりと…
何とかギリギリ立ち会いに間に合いました!
赤ちゃんがパパが来るのを待っててくれたのカナー?
早速親孝行な子です♡
♦お子さまへの想い♦
がんばって産まれてきてくれてありがとう♡♡
健康にすくすく育ってね。
ご協力に心から感謝します。
ご家族皆さまのお健やかな日々をお祈りしています。
アイレディスクリニック スタッフ一同